第170章 涙色の答案用紙(33)修学旅行編
政宗もただじっと見て、何にも言わない。それが余計に胸を熱くして、落ち着かなくて……
「な、何か言いなさいよ!それとも?セクシー過ぎて〜言葉がないとか?」
いつもみたいに、冗談を更に冗談ぽく言って、得意げに笑いバシッと肩を叩く。
綺麗?見違えた?ちょっとは……
心の中しか質問できない、
可愛くない私。
だから、バチがあたったのかも。
目を合わす勇気もなくて、スタッフさんがスタンバイ完了した事を、扉越し告げられ……
中に入ろうとした時。
「自信持てねえなら、着るなよ」
ドクンッ。
全身に突き刺さるような言葉。
最悪……。
(な、んなの……)
確かに?胸はないし?
ちょっと、背伸びし過ぎたかな?
何か私じゃないみたい?
とか、思ったけどさ……
「だよね〜」いつもならそうやって、軽く返せたかもしれない。
「あはは」普段なら笑って流せたかもしれない。
剥き出しになった肩。
自分でも自覚するぐらい、震えだす。
泣くな、泣くなって我慢しても。
無理だった。
ドンッ!
政宗の肩を強く押した瞬間。
床にポタポタ数滴、涙が落ちた。
滅多に出ないのにさ……
ほんと、
「……っ。だ、…れの…ため…に」
メイク台無し。
「誰のために!背伸びしたと思ってんの!ばかっ!!」
強がってただけで、不安だった思いが溢れる。ひまりのことが大好きで、もし政宗とくっ付いたら心から祝福して上げれるか不安な時もあった。
横から見ていたのは、私も同じ。
政宗が時々、切なげな瞳でひまりと徳川を見ていたように、その姿を私も近くで見て……
胸が苦しくなるのに気付いた。
「撮影…、キャンセル、して…貰ってくる…」
顔を一瞬だけ上げて、くるっと背中を向け腕で泣き顔を隠す。