第31章 月見ず月(3)家康様side
ゴールデンウィーク初日。
何故か俺は朝から赤い車に乗ったバカ教師に、家から引きずり出され……
休日にも関わらず、道場に来ていた。
「家康、あんまふくれっ面するな」
「……腹立つなって方が無理。政宗こそ、店。忙しいんじゃないの?」
「仕込みは昨晩、終わったからな。今日はバイトのヤツが入るから、空いてたんだよ」
「おい。貴様らに、口動かす暇はない。早くやれ」
木陰で一人優雅に椅子に座る、教師兼顧問の鬼を睨みながら俺は渋々、草むしりを始めた。
暑いし。
面倒だし。
最悪だし。
(ひまりには、避けられてばっかりだし)
明後日の返事も今の所、音沙汰無し。
朝練があった二日間はちゃんと律儀に電話掛けてきたから、一応声は聞けたけど……。
すぐ、切られたし。
ゴールデンウィーク中、下手したら声すら聞けないかも。
そんな事をつい考えながら、
手を動かし…
ある程度、区切りがついた所で
「ってか、秀吉先輩は?部長なんだし、本来ならここに居ても可笑しくない筈だけど」
軍手を取って一旦、
政宗と日陰で休憩する。