第170章 涙色の答案用紙(33)修学旅行編
着替えの前にまずメイク。スタッフさんに要望を聞かれ、とりあえず目が大きく見えるようにと、大人っぽくなるように!その二点を重視してお願いをした。
鏡の中に映る自分の顔が、みるみる変わって、次はヘアセットが始まる。
「どのカツラにします?古典風と現代風で大分、雰囲気変わりますよ」
「折角だから古典風で!!」
横兵庫の半カツラを被り、前髪と両サイドは自毛で結い上げて貰い、仕上げに、頭に重みを感じるぐらいの花飾りと簪を付けて完成した。
「江戸時代にタイムスリップ!って感じ!!」
「スタジオにはキセル、傘、奥義、色々取り揃えてありますので、気分がまた上がりますよ!……では、着替えをして貰って。紅は最後になるので」
制服を脱ぎ、数分で着替えが終了。
そして、秋の紅葉のような真っ赤な紅を塗って……
スタッフさんと一緒に、鏡の前に立つ。
「よく似合いますよ!」
「ありがとうございます!(でもなぁ……)」
褒め言葉は素直に嬉しい。嬉しいけど、お礼を言いながらも、つい視線はコンプレックスの胸元に移動。
ここの一番人気の黒地に金糸。十二単のように襟が重なっている豪華で華やかな、打掛を選んだ……までは良いけど……着替えた後に猛烈に後悔していた。
少しでも、好きな人には可愛い、綺麗だって思って欲しい。
恋する女の子なら、
皆んなそうなんだろうけど……。
問題が一つ。
そう問題は……
この、まな板胸!!
(何にもない!!)
心の中で叫び声を上げた。
ちょっとでも色っぽい所を見せたら、少しは政宗に意識して貰えるかと思い、花魁にしたけど……
打掛は肩の半分ぐらいに、頼りなく引っかかりガバッと開いた胸元。
もう、コレはどうしようもない!!
夏休みの海。
思い出さなきゃ良いのに、思い出す。
ひまりの水着姿を見て、
頬を微かに染めた政宗。
誤魔化してたけどさ……
(胸チラ見してたし!!)
泣きたい所を耐え、グッと拳を握り……
ここは潔く諦め、スタジオに向かった。