第170章 涙色の答案用紙(33)修学旅行編
「二泊三日。制服のブラウス、着替えと身だしなみセット……ぐらいで、来た時はそんなに重くなかったのにーっ!」
ふふっ。と、ひまりが笑う隣で弓乃はドンッ!と大袈裟な音を立て床に鞄を置くと……
肩をコキコキ鳴らす。
「ゆっちゃん。お土産いっぱい買ってたもんね!でも兄弟へのお土産とか、私、一人っ子だから憧れる」
「悲惨なんだからね!毎日、家の中!夕飯なんてほんと、戦争」
大学生の兄が一人、中学生の弟が一人と、小学生の双子の弟……五人兄弟の中で女の子は弓乃の一人。
乙女心を持ちながらも、活発で勝気な性格は、家庭環境からかもしれない。
「もう、一泊はしたかったなぁ〜」
そうボヤきながらも、指折り数えながら兄弟に何を購入したか、弓乃はひまりに話す。
その表情は、嬉しそうだった。
「前に遊びに行った時、弟ちゃん達にいっぱい遊んで貰えて楽しかったよ!また、行かせてね!」
「いつでも大歓迎!兄貴もひまりに会わせろって煩くて………って。徳川には内緒でおいでよ」
え?何で?
相変わらず鈍感なひまりは、首を傾げる。弓乃は家康が彼氏になった後を想像し、間違いなく今よりひまりへの執着は酷くなると予想。
「……徳川なら、小学生の弟にまで妬きそうだしさぁ〜」
「誰が、妬くって?」
「へっ!?」
いつの間にか、近くに立っていた家康。弓乃はバツ悪そうにそそくさとひまりの後ろに移動して、聞き間違いじゃない!と言い放ち……
ポンと目の前の背中を押す。
「え?わっ……!」
「はい!ひまり、一日かしてあげるんだから感謝しなさいよ!」
ヨロけたひまりを家康は腕で受け止め、何それ?と、素っ気ない言い草を返すが……
「ひまり。荷物どこ?」
内心はデレ全開。
「荷物?時計の横に置いてあるよ?」
ひまりと手を繋ぎ、荷物を掴むとスタスタ出口に向かう。