第170章 涙色の答案用紙(33)修学旅行編
修学旅行、最終日の早朝__
ツインルーム。
ひまり達と同じつくり。
しかし一泊目は険悪な状態だった為、ベットとソファで別れて寝ていた政宗と家康。フカフカの高級ベット。その寝心地にすっかり、寝坊したのは……
ベットに備えられたアラーム。
設定は、昨日のギリギリに設定された時間のまま、鳴り出す。
pipipi……
「……んっ。……煩い。……………は!もう、こんな時間だし!」
家康だった。昨晩、京の町を雨の中走り続け、ひまりに一世一代かと思うぐらいの告白。その後の信長からの呼び出し。身体は休息を求め、夢見る暇もなくグッスリ。
ガバッと布団を剥ぎ、ふわふわの猫っ毛に寝癖をつけて起き上がる。
「やっと、起きたか。朝食までは後、二十分。何とかなるだろ?」
既に制服に着替え腕時計をはめながら、家康を見下ろす政宗。
「……起こすとかない訳?」
「ないな、生憎。寝言でひまりの名前、ニヤケながら言う奴には」
面白くなさげに言いつつも、顔は清々しい。修学旅行前からひまりの気持ちを知り、心の整理は大分ついていた政宗。家康の昨晩の必死さを見届け、其れなりに認めてもいたのだが……少々の意地悪も友情の内。
二人の口の端に出来た傷。
仲直り、とは違うが男の友情のケジメ。
一発ずつ、想いをぶつけたが……
体格の差から、明らかに家康のがダメージは大きい。薄っすら傷の周りに青痣が、出来ていた。
(っ!…っとに。ひまりへの言い訳。考えるこっちの身にもなって欲しい)
家康は唇の端に触れる。
そして言い返す時間もなく、バッとTシャツを脱ぎ捨て、着替えを掴むとシャワールームに駆け込んだ。