第170章 涙色の答案用紙(33)修学旅行編
「まだ、付き合ってないよ?」
「もう、幼馴染でいる理由なくなったんだよね?今日、返事しないの?」
「ちゃんとあの場所で言いたいから」
ひまりは栗色の長い髪をアイロンで更に伸ばした後、一房掴む。
(今度は……)
石碑にこだわる理由はもう一つ。
一つだけ想いがあった。
「う〜ん……雨に濡れたからかな?
髪がキシキシしちゃう」
「この前、買ったヤツ合わないとか?」
「だからかな?最近、潤いもなくなった気が……」
ひまりは並べられたアメニティを順番に見ていく。
何か良いのないかな?
そして、濃いピンク色の可愛いボトルに手が止まり、顔の近くまで持ち上げる。
『ホテルのオススメ商品!ツバキ系オイル!ピンク山茶花(さざんか)の香り』
ペタリとボトルに貼られたメモ。
鼻を近づけクンクン香りを確かめ……
「あ!凄いいい香りがする!山茶花って秋の花だよね?」
隣でバッチリメイクを決めた弓乃は「確かね?」と、半信半疑で頷きボトルを受け取ると香りを嗅ぐ。
「あ!何かひまりっぽい!前のよりちょっと?甘さが濃い気もするけど」
「残念……さっきもうトリートメント付けちゃった」
後でホテルの売店見てきたら?
お取り寄せも出来るって書いてあるから、気に入ったらまた買えるし?
と、進められひまりは「うん!そうする!」と、笑うと甘酸っぱい香りがする髪を、片方耳にかけヘアピンを付けた。
最後にあのお気に入りリップを、久しぶりに付ける。
「そう言えば……ひまり寝るの遅かったよね?」
ひまりは、反省文をちょっとね?
と、言ってリップを昨日、お揃いで買った和柄のポーチの中にしまう。
それが女の子二人の合図。
「「よし!スマイル!」」
鏡に映るのは、恋する高校生。
自由行動の報告はバスの中でと、頬を突っつきあいして今度は顔を見合わせ笑った。
両思いの
「幼馴染以上、恋人未満」
片思い中の
「友達以上?恋人未満?」
二組の自由行動が始まる。