第168章 涙色の答案用紙(32)修学旅行編
部屋の明かりが消え。
家康が病室の中に入ってくる。
その手には火の点いてない蝋燭が三本だけ立てられた小さなホールケーキ。
さっき、コンビニで購入した物だった。ひまりは、ポケットから小さなおもちゃのライトを取り出すと、ケーキを照らす。
「ろうそく……も、三本でっ、火も点いてなくて…っ。こんなライトじゃ雰囲気出ないかもし、れないけど…っ」
家康はベットの横にあるサイドテーブルに、それを置く。
天音は、それを見て息をする暇もなく、瞳からスッー…と涙を流した。
「白鳥が書いたプロフィール帳。ひまりは、手紙を書くのに何度も見てたから」
だから、誕生日を覚えてた。
家康はそう言って、泣いているひまりの腰元を掴み、自分の隣に引き寄せる。
「あ、んな約束……覚えてくれてたの?」
天音は、涙をろうそくの蝋のように、流したままケーキを見つめ、尋ねた。
「……嬉しかったらしい。白鳥といつか……の、約束出来たことが」
天音は、「今」という「今日」を、大事にして遠い未来の約束を交わすのを入院中は特に、恐れていたのだ。
そんな中……
ーー病院内だと、誕生日のケーキ。ろうそくに火がつけれないから。吹き消せれなくて……
ーーなら、来年の誕生日!家康と考えて、ろうそくの代わり見つけてくる!
ーーでも……来年はどうなるか……。
ーーなら、いつか!いつか絶対にしよう!幼馴染三人で一緒に!約束!
ーー約束……?……うん!
暗闇の中。
ひまりが照らした小さな光。
家康は、その手に自分の手を添え……
「バカみたいに真っ直ぐで、お人好し。辛い癖に何でも必死で、だから俺はほっとけない」
「バ、カは余分だよ……っ」
「この約束の為に、お預けされたし」
「…っ、く…二人ともあ、りが…と」
揃った幼馴染三人。