第168章 涙色の答案用紙(32)修学旅行編
そして……あの頃の自分を思い出しながら、口を開く。
「……家康が初恋なのを話したのは、天音ちゃんが一番で。私にとって、大大大好きな幼馴染は天音ちゃん一人だった」
大好きな友達は沢山いた。
でも、天音ちゃんは特別な存在で……
(だから、同じ気持ちなら。家康が好きなら教えて欲しかった)
そしたら、もっと私達は違う存在に変わっていたかもしれない。
喧嘩もしていたかもしれない。
それは、今はもうわからないけど……
まだ、あの頃の私は恋がどんなのか良く分からなかった。だから、初恋は実らないって言われただけで、プロフィール帳の違いを見ただけで……
閉じ込めてしまったぐらい……
まだ、淡い恋だった。
「言えなかったの。いっちゃんが、ひまりちゃんを好きなのは気づいてたから。それと……信じても、らえないかも、し…れないけど……」
ひまりちゃんの事が、同じぐらい大好きだった。二人を見ているのが、好きだった。
それっきり、私達は口を閉ざす。
暫く流れた沈黙。
時間は戻せない。
それは、お互いにわかっていた。
だから……
私はスカートの裾を摘み、
「……正直に言うね。ショックが大き過ぎて……天音ちゃんのした事を、今の私には受け止めれない」
(こうやって、話すだけでも辛い)
皺が出来るぐらい引っ張って……
「明日は、無理だと思う。あ、さっても……一ヶ月後も…もしかしたら一年後も……でも、でも…っ、いつかは受け止めれるかもしれない…っ!」
「ひまりちゃん……」
「で、も今はむ、りだ、から……っ。今日は、約束だけ……守りにき、たの」
床にポタポタ涙を落として、扉まで歩く。
「え……?や、くそく……」
私は、ゴシゴシ涙を拭きながら……
電気をパチリと消す。
それが合図になって……