第30章 月見ず月(2)
(これ可愛い〜)
私は店内に入って早々、目に付いた商品を手に取る。
春色のパステルカラーの矢筒み。
裁縫が趣味の私は、弓巻きや弓入れは季節に合わせて、作ったりしているけど流石にコレは作れないし……
貯めたお小遣いで、
買おうか悩んでいると……
「あっ!部長!こんにちは!!」
ゆっちゃんの声に反応して
思わず振り返ると、
「ひまり先輩♡」
「わあっ!!」
何故か秀吉先輩じゃなくて
三成君がすぐ後ろに立っていて。
私は驚いて仰け反る。
「驚いた顔も可愛らしくて。はぁ……抱き締めて良いですか?」
「何で!ここに!」
両手を広げる三成君を軽く押し返し、声を上げた私。
「三成、止めとけ。ひまりが困るだろ?」
「……お困りになっているのは、秀吉先輩の方では?」
「お前……弓具買うの付き合わせといて。喧嘩でも吹っかける気か?」
その会話で、二人がここに居る理由が分かった。
「私まだ、道具を揃えていなかったので……秀吉先輩に目利きして貰ってた所なんです」
「そっかぁ」
「お二人、仲良いんですね!」
ゆっちゃんは、密かに憧れている秀吉先輩に逢えた事が嬉しいみたいで、ニコニコと笑顔を浮かべてる。
秀吉先輩は、少し困ったようにタレ目を更に下げて……
「仲良いかは別として、部長として一応見てやらないとな。まぁ…最初は家康か政宗に頼めって言ったんだけど」
出てきた家康の名前につい、反応してしまう。
「あのお二人と来たら、大変な事になりますから」
店内がぐちゃぐちゃになると、お店の人に迷惑が掛かります。
三成君は穏やかな笑みを溢しながら、物騒な事を言う。
(何で、ぐちゃぐちゃになるんだろう?)
それから私達四人は中を見て回り、秀吉先輩のアドバイスを聞きながら買い物をした。
「ひまり先輩、折角ですので送らせて下さい」
「ありがとう!なら、お言葉に甘えちゃおうかな?」
ゆっちゃんと秀吉先輩と別れ、家の方向が一緒の私達は駅へと歩き出した。