第167章 涙色の答案用紙(31)修学旅行編
京の町を彩る花火。
真っ赤な大輪の花が一面に咲く。
嵐、雨、雷鳴、渦。
花火が咲いてパッと消えるように、去っていた。
二人は重なり……
離れると……
赤い光に包まれながら。
「好きだ……」
家康の言葉に……
(私もだよ……)
ひまりは心で返事をする。
「まだ、ヒント足りない」
「えっ///も、もうだめっ!」
両手を口で塞ぐひまり。
家康はムスッとする。
それにはちょっとした理由があった。
「なら、政宗と何回したか教えて」
「え!な、何で知って……んっ…」
思わずひまりは口を押さえていた手を離すと、家康はすかさず唇を奪う。別に知りたくはなかったが、やきもきはしていた。
まだ、二人は幼馴染以上恋人未満。
でも、夏休みとは確実に違う二人。
修学旅行中に少しずつ問題(誤解)を、解きながら……石碑に繋ぐ。
花火が終わると……
「着物ってクリーニング出せるのかな。つつじさんに謝らないと……」
ひまりはびしょ濡れの着物を引っ張る。そして、シュンと肩を落とし切れた鼻緒の下駄をじっと見ていた。
「後で、それは直してあげる」
「え?直せるの?」
多分と答える家康に、何で後?と、不思議に思う。しかし、次の瞬間……ふわりと体が宙に浮き、短い悲鳴を上げその理由がわかる。
「きゃっ……!」
ひまりは驚いて短い悲鳴を上げ、咄嗟に家康の首元に腕を絡ませた。状況が把握出来ず混乱していると……
「橋。一緒に渡る約束したから」
家康はひまりを横抱きして、
そのまま歩き始めた。
「ま、待って!ただでさえ、びしょ濡れで重いのに!」
「重くない。この前も、保健……っ」
しまった!家康は途中で言葉を遮り、誤魔化そうと平然とした態度を取るが、さすがにひまりも「この前」と「保健」のワードが出れば勘付く。