第167章 涙色の答案用紙(31)修学旅行編
ゴォォォ………
ォォォッ………ゴォ……
振り返る背中。
走る筋光がひまりの姿を照らす。
消えそうで不安になる。
けど、その儚げな表情が……
堪らなく綺麗に見えて。
ぞくりと背筋が震えた。
「受け止めて」幻聴か電話越しか。
その声が全身に行き渡る。
自分を責めることで、見失った。
後悔ばかりして、見落とした。
結局、ひまりがどんな姿でも……
どんな『時』もひまりが好きだってことに。
すれ違ったのは伝える瞬間だけ。
想いは一度もすれ違ってない。
いつだって俺は……
思い出の中の『ひまり』も。
この先の『ひまり』も。
『今』この瞬間のも俺は……
耳から携帯を離す。
そして
視界を遮る、邪魔な
前髪を無造作に搔きあげ
目に焼き付ける……
真っすぐに走ってくる、お姫様を。
「い、えやすっ!!」
両手を広げる。
踏ん張りにくい橋の上……
それでも、
両足に力を入れて……
受け止める準備をして……
ひまりの瞳から零れるモノ。
それが、雨か涙がわかる前に。
腕の中に閉じ込めた。