第166章 涙色の答案用紙(30)修学旅行編
ゴゴゴォ………
怒りのようなうなり声が鳴り。
強い風が突風のように吹き荒れ……
髪が誰かに引っ張られたように、
グッ……と、後ろに流れた。
(私…何か………)
大切なことを忘れている。
フラフラとまた、歩き出す。
ーー今を大事にしなさい。
つつじさんの深い言葉。
ーー自分を見失うな。
織田先生の秘めた強い言葉。
ーーほら!次は、ひまりが行きたがってた赤い橋!
ゆっちゃんがくれた温かい気持ち。
ーーーー泣くな。また、笑わせてやるから。俺は、笑顔を戻せねえからな。これからも、笑わせてやるよ。
政宗の見守ってくれた優しさ。
秀吉先輩も三成くんも最近、教室や部活中に他愛のない話を何度かしに来てくれて。特に用事もない何でかな?って思ってたけど……今、思えば心配してくれてたのかもしれない。
明智先生だって、修学旅行に来る前も来てからも前みたいに面白がって揶揄うんじゃなくて、緊張が解れるような優しい冗談ばっかりで。
お母さんも毎朝、
欠かさずオムレツ作ってくれて……
橋を渡りきる寸前。
キラッと足元で光る。
イルカのストラップ……。
携帯がちょうど、
橋と地面の境界線に落ちてて……
手を伸ばした。
次の瞬間___
電源がパッと点いて……
目を見開く。
そして……
大きく跳ねる胸。
プルルルル……
何で?とか、考える前に……
着物で画面を拭く。
びしょびしょで意味ないのに。
指が滑って
もどかしい想いをするのが、嫌だった。