第166章 涙色の答案用紙(30)修学旅行編
全身びしょ濡れで。
こんな馬鹿なことしてる場合じゃないのに。そう自分で思ったら、ツンって鼻が痛くなって……
口を閉じたまま、歯をギュっと噛む。
そして吐息が出て……
唇が大きく震えて……
「……っく……あ、っ…あぁ…」
一気に気が抜けたみたいに、
子供みたいに声を上げて泣く。
夏の大会。
好きって気づいたあの時に……
聞けばこんなことにならなかった?
花火を見たあの夜。
あの時に……
答え合せすれば良かったの?
「ひとつし、かっ……出来ないのに…っは…ぁ…欲張るどころか……そのひとつも、わからないなんて……っ…」
私は『今』
何を願えば良いのか全然わからない。
三つ葉のヘアピンも失くして……
(あれがなきゃ……向き合えない…)
夏休み前。
宿題出された時みたいに。
今の自分の気持ちと向き合わないと。
『答えは出てるのに?』
(え………?)
雨音に混じりながら……
突如、聞こえた声。
雫をポタポタ落としながら、
左右首を振り辺りを見回す。
(気のせい……?)
私の声に似ていたような……
誰もいないのを確認して、
鼻緒が切れた草履を手で持ち……
立ち上がった時……
『この先も家康と、
ずっと一緒にいられますように』
まるで心に語りかけられたように……
私の声が胸の中で響いた。