第166章 涙色の答案用紙(30)修学旅行編
ザッァァァア………
大量の雨がぶつかり……
小石を屋根に散らしたような音が
あちこちから聞こえる。
近くに咲いた彼岸花の茎が、今にも折れそうになってお辞儀をしてるのが見えた。
携帯を握り締め、
祈るように手を組む。
橋の上に一歩、足を置いて……
(私の願い。それが、今はわからない)
だから、教えて……
そう心で唱える。
叶わないと言われた初恋。
それが、叶っていたかもしれない。
でも、もうあの時間は過ぎて。
渡された、
ピンク色の封筒と真実。
「い、まさら……だよ、ね…」
家康にした二度目の恋。
石碑に行くまでに抱いた気持ち。
それは、もうあの瞬間にしかなくて。
返して貰っても、二度と
付けれそうにないトリートメント。
「な…んで…上手くいかないのかな」
ピンク色の封筒。
トリートメント。
その二つで壊れた恋。
すれ違った私達の想い。
雨水を吸い込み、
ずっしりと体に重みが増す。
曲線を描いたような橋。
ちょうど真ん中辺りで、緩やかな坂になり雨で更に滑りやすくなっていて……
転けないように気をつけようと、
おぼつかない足で踏ん張った瞬間……
ブチッ……
「きゃ……っ!」
草履の赤い鼻緒が切れて、
前につんのめりに状態になり……
咄嗟に受け身を取る。
「……っ!!」
両手を突く形で、転んだお陰で、何とか顔や頭を打たなくて済んだけど……
転んだ拍子に
携帯を離してしまい……
坂を下るように滑り落ちながら、
奥に飛んでいってしまった。