第164章 涙色の答案用紙(28)修学旅行編※家康様side
ポツリ。ポツリ……
雨雲が見えない速度で、
不安を少しずつ呼び起こすかのように……近づく。
雨粒が少しずつ膨らみはじめる。
目には映らない変化。
本能寺跡___
「予定より降り出す時間が早いのは、気のせいでしょうか?」
「まだ、五時過ぎ。確か、一時間前ぐらいから降り出す予定じゃなかったか?」
「……予測が狂い始めてる」
「「え!?」」
三成と秀吉は同時に声をあげ、液晶画面とかれこれ一時間は睨めっこをしている佐助を、凝視する。
プルルルル……
プルルルル……
信長は携帯を取り出す。
「徳川家康」
表示名を見て指が止まる。
「織田先生、電話出なくて宜しいのですか?」
三成は、一向に電話を出ようとしない信長に尋ねると……
「先刻、光秀から連絡があった。病院付近で小春川に会い、ひまりと連絡が取れず探しているようだと、な」
「まさか!ひまりさんの心と関係が!」
佐助は三成の言葉を聞き、鉄仮面のような表情を微かに崩す。
「あれほど、目を離すなと釘を刺してやったと言うのに。あの馬鹿が……」
恐らく家康は病院に向かうだろうと、信長はスーツの上着を脱ぎ、自分の愛車のシートに上着を放り投げ、乗り込む。
佐助が三成と秀吉を連れ京都まで運転して来たのは、信長の車だったのだ。