第164章 涙色の答案用紙(28)修学旅行編※家康様side
腕を勢い良く振り下ろす。
「雷、怖がって俺の腕の中にいたのは事実だ。その辺はひまりに直接、聞け」
一つ靄が消えた俺とは違い、ポツポツと目では見えにくいモノが頬にあたる。
ハッと辺りを見回せば、赤く染まっていた風景が、薄暗くなりかけ……
灰色の雲が奥から押し寄せていた。
そして……
着物の裾を少し上げ、走り寄ってくる小春川の姿。
「病院でひまりを見失って!何度電話しても、出なくて!!」
ここに来るまでの間、泣いていたのか普段の活気ある声は掠れていた。
俺は小春川から事情を聞き、急いでひまりの電話番号を呼び出す。
プルルルル……
プルルルル……
プルルルル……
続く呼び出しコール。
最後は機会音声が流れ……切れた。
「雨で戻るかもしれないからな。俺と小春川は呉服屋に付近を探す。お前は虱潰しに探せ!」
「徳川!絶対に見つけなさいよ!」
二人にバシッと背中を押され、俺は走りながら明智先生に電話を掛ける。
お客様のご都合によりーー……。
恐らく、病院内。
電源は切られていた。
舌打ちして携帯を握りしめると、気乗りはしないがこの状況では、仕方ない。渋々、織田先生に掛けるが……ひまり同様、呼び出し音のみ。
(ひまり…っ…)
再び、病院へと向かった。