第164章 涙色の答案用紙(28)修学旅行編※家康様side
知りたいこと、聞きたいこと。
山ほどある。
(ひまりに直接、聞けばいい)
どんな真実でも受け止める。
瞬きすら忘れ睨み合いでもなく、お互いを探るわけでもなく……俺たちは寸刻、視線だけをお互いに向けた。
政宗はフッと気が抜けたように、吐息をこぼす。そして、藍色の着物の袂から両腕を出して、曖昧な笑みを浮かべた。
「そうかよ……」
背中を向け歩き出そうとした時。
グッと肩を捕まれ……
自然と顔が後ろを向く。
「言い逃げか?」
低く押しこもった声。
シュッ……
風邪を切る音。
咄嗟に捕まれた肩を払い、
顔を横にズラして……
パシッと重い拳を掌で受け止めた。
至近距離で眉がピクッと動くのが見えて、政宗はバッと腕を振り下ろす。
「お前、ここは殴らせろよ」
「無理。負けるつもりないから」
「しゃーねえか。殴る機会、いくらでもあったのによ。っても、見失ってるお前を殴っても腹の虫は収まらなかっただろうしな」
政宗はそう言って、吹っ切れたように表情と声を緩め俺の肩に手を置く。
「俺の感想、教えてやるよ」
俺はいらない。と、答えたが、まだ煽るつもりなのか耳に口元を寄せ、「美味かったぜ」と呟かれ……
(く、そっ……!)
今度は俺の拳が飛ぶ。
……が。
さっきと立場が反対になっただけ。
あっけなく拳は捕まれ、
ギリギリと拳と掌の押し合い。
「ばぁか。最後まで聞け。人が折角、ひまりから裾分けされた、お前の家の栗ご飯、褒めてんのによ」
「は?栗ご飯……?…って!まさか!」
『ごちそーさん』
政宗からのメール。
ーーふふっ、やっぱり秋は栗だね!
ーーだな。……アレ、今度返す。
初日のバスの中で聞いた、会話。
話が繋がり、ギロリと政宗を睨む。