第164章 涙色の答案用紙(28)修学旅行編※家康様side
京都の町を赤く染めた夕陽。
目につくもの何から何まで染まっているように映り、その赤一色の光景に綺麗とかそんな感想は不思議と降りない。
妙に胸が騒ぎ、俺は政宗の元に急ぐ。
待ち合わせ場所。
「二条城」徳川家康が京都御所の守護と将軍上格の時の宿泊所として、江戸時代に造営した城。
東大手門から中に入り、
番所前に見えた政宗の姿。
「遅かったな。ひまりと小春川は、白鳥の様子を見に病院に行ったっきり、まだ戻ってない」
何で、わざわざ病院まで。
眉に刻む皺が深まる。
ーーうん。ひまりちゃんに話したいことあるから。
白鳥の言葉に嫌な予感を感じ、急いで空を見上げ織田先生に目を離すなと、
昨日、言われた言葉を思い出す。
(病院なら、明智先生が到着した頃)
政宗と話した後、すぐに向かおうと決め、じりじりと距離を詰め……
……口を開く。
宣戦布告でも、何でもない。
ただ……
「ひまりへの想いだけは、誰にも負けない。前も今もこれからも……」
例え、今のひまりが政宗に傾いていようが、想っていようが関係ない。
抱かれていようが、俺はどんなひまりでも……
(好きだ。その想いだけは一度も、消えてない)
また、傷つけるかもしれないと恐れ。
これ以上、ひまりから笑顔を奪うわけにはいかないと。
……動けなくなった。
傷つくひまりを見るのを……
また、腕からすり抜けられるのを……
(俺は、ただ恐れていた)
でも、ようやく気づいた。
それをひまりに伝えに行く。
一呼吸の時間さえ、今は惜しい。
秋風がさわさわ揺さぶるのを、耳で聞きながら……
もう、迷いはない。
「ひまりの笑顔を戻せるのは……」
俺だけだ。
それだけは譲れない。
きっぱりと言い放ち、
俺は政宗から一歩離れる。