第29章 月見ず月(1)
___休み時間。
「ちょっとひまり?元気なくない?」
珍しく溜息ばっかり吐いてる私の様子にいち早く気づいてくれた、親友のゆっちゃん。
同じ弓道部で、一年生の時からの一番仲良し女の子。休み時間になった途端、すぐに席まで駆けつけてくれた。
「う、うん!何でもないよ!それより、明後日の映画!楽しみだね!」
私は笑ってみせる。
相談したくても、いまいち何を話したらいいのかよく解らない。
(変に心配かけちゃうのも、悪いしね)
ただ……。
家康をチラッと横目に見る。
窓辺に背中を預け、政宗といつも通りお喋りしてて……
いつもと変わらない光景。
「姫宮!お呼び出しみたいだぜ」
突然、クラスの男の子に名前を呼ばれへ?私?と自分の顔を指差し、立ち上がる。するとこっちこっちと手招きされ、私は首を傾げながら廊下に出た。
すると一年の時、同じクラスにだった男の子がそこに立っていて。
何か用事?と尋ねると、いきなり目の前にチケットのような紙を二枚差し出された。