第163章 涙色の答案用紙(27)修学旅行編
天音ちゃんが倒れた……
あの日のこと?
(そ、んな……っ……)
ピンク色が私の……?
私のだったの?
「ど、うしてっ……何で……っ…」
プロフィール帳に涙が落ちて、
そこに水溜りが広がる。
……私はもう一度。
今度は立ち上がって。
「間違えただけだよね?そ、うだよねっ!?…わざとじゃ…ないよ……ね?」
切り裂けそうな声。
張り裂けそうな胸。
「トリートメントだって、ただ貸してって言うの忘れて……ずっと、返しそびれただけだよね…っ!?」
ただ、人形みたいにピクリとも動かない……天音ちゃんの肩を揺さぶる。
するとガタガタと手に、
大きな振動が伝わって……
「ご、めんなさいっ……二人には幼馴染でいて欲しかっ……た。どうしても一日だけ……いち、にち……ひまりちゃんに…な、りたかった」
プロフィール帳をすり替えた理由。
トリートメントを持ち出した理由。
「ま、さか……あ、んなことになるなんて…っ。本当にごめん…なさい…ごめんなさいっ!」
それを聞いた瞬間。
今度こそ、
ガラスが粉々に割れたように……
ボロボロに砕けた心。
大大大好きな幼馴染。
そう思ってたのは、
自分だけだったのかと思うと。
ーー今のは…っ、間違いで…!
何であの時、家康の話を
ちゃんと聞かなかったんだろうって。
掴まれた手首。
すり抜けた時の感覚だけ……
まだ、残ってる気がして……
涙が止まらなかった。