第163章 涙色の答案用紙(27)修学旅行編
市内にある病院を見上げる。
メールできてた名前と、
目の前の病院名が一致すると……
隣にいるゆっちゃんに声を掛けた。
「良かったの?政宗と一緒に待っててくれても、良かったんだよ?」
「いーのいーの!ほら、確か庭で待ってるんでしょ?ここで、イケメンの白衣着た先生ウォッチングしてるから、行っておいで」
ゆっちゃんに背中を押され、少し後ろ髪を引かれながら私はコクリと頷いて、走る。
(ありがとう)
きっと、心配して付いて来てくれたんだ。天音ちゃんの所に行ってくるって……私の声が少し震えてたから。
途中、通りが掛かった看護婦さんに庭の場所を聞いて、建物をグルッと半周。
すると、
人工芝が広がり……
手入れの行き届いた……
庭のベンチに座る、病院服姿の天音ちゃんを見つけた。それを見て、自分が着物姿だったことに気づいて……ちょっと場違いかな?って思いながら……
歩み寄る。
庭の雰囲気と病院の外観。
それが、あの春の光景と一瞬だけ重なる。天音ちゃんは、胸を押さえ大きく深呼吸すると立ち上がり……
「ごめんね。ひまりちゃんに来て貰うことになって……まさか、意識失って救急車で運ばれるなんて思ってなくて」
今朝から、
ここに来るまでの経緯を話してくれた。
お父さんの為に祈願に行き、呉服屋さんに向かう途中で、倒れ…気づいたらこの病院に運ばれていたと。救急車を呼んだのは家康で、天音ちゃんが意識を取り戻すと同時に病院を出たみたい。
全然違うことを想像していた私は、罪悪感と安心感。どっちも感じて……
天音ちゃんと
目が合わせれず、俯く。