第162章 涙色の答案用紙(26)修学旅行編
とある市内の病院。
病室の窓に寄りかかり、空を見上げる。
白いカーテンが風に揺れ……
懐かしい記憶が蘇る。
確か春。
許可が下りて三人で庭で遊んだ時。隠れんぼの最中に倒れて、意識が戻らない白鳥を見てひまりが……
ーーどうして、家康はお医者さんになりたいと思ったの……?
ーー何、急に?また、ひまりの何で病がはじまったの?
急に聞いてきた。
ずっと白鳥が倒れたことを気にして泣くから、ちょっと揶揄えば元気になるかと思ったけど……涙目でひまりは何で?って、何回も聞いてきて……ちょっと困った。
本当のきっかけなんて言えるわけがない。あの頃の俺は特に。
今でも聞かれたら、
誤魔化すかもしれない。
ーー笑顔を戻せる気がしたから。
嘘じゃないけど、詳しいきっかけは言わなかった。でも、ひまりはそれだけで十分だったみたいで、泣き顔が一瞬だけ笑顔になって……
ーーなら、絶対に!天音ちゃんの病気を治して、笑顔にしてあげてね!
一番、戻したい笑顔が見れて。
あれからかなり勉強した。
夏休みのしんどい夏期講習も文句言いながらでも通い、頑張ったし。
雲がかってきた空を見て、窓を閉める。