第162章 涙色の答案用紙(26)修学旅行編
遠くで鳴るサイレンの音が、
胸にもやもやとした感情を鬱積する。
昨夜の天音ちゃんの話。
時間が経てば経つほど、気になる。
あの言葉と、トリートメントがどう繋がるのかがわからない。
どんな理由があっても、人のモノを勝手に持ち出すのは、絶対にしてはいけない。天音ちゃんも、それは分かってたからあんなに震えて……
(思うはあなた一人……今日は、確かその日だって。凄く勇気がいるって言ってたけど)
明日、話すって言われて。
ショックで何も追求出来なかったけど。
「思うはあなた一人」
その日に、
家康と一緒にいるってことは。
「……二人。もう来ないかもね」
ポロリと溢れた言葉。
「ひまり……。あ!見て!抹茶のアイスだって!一回、休憩しようか?ほら!政宗、買ってきてよ!」
ゆっちゃんの明るい声を聞いて、ハッと私は口を押さえ「わかったよ」と言って、歩き出す政宗を引き止める。
けど、気にするなって言われて。
申し訳ない気持ちで一杯に。
「本当にごめんね」
押さえた手を下ろして、
私はゆっちゃんに謝る。
二人の優しさに甘えて、
迷惑ばかりかけてる自分が本当に嫌。
しょんぼり肩を落とすと、
「謝る暇があるなら食って、次、行くぞ」
「ほら!次は、ひまりが行きたがってた赤い橋!」
ほろ苦くて甘い抹茶のアイス。
二人の優しさに胸がいっぱいになる。
そして……
気づいたらあんなに行きたかった、
橋の前に、立っていた。
「一願成就」
(一つだけ……)
今、私が願うのは……
朱色の橋の上。
そこに……一歩、足を踏み入れようか。
俯いて悩んでいると……
「ほら、早く!急がないと、先生に怒られちゃうよ!」
反対側からこっち側へと、
後ろ向きに走る女の子が目前に迫り……
ドンッ!
(わっ…!)
ピンク色のランドセルと
私のお腹が派手にぶつかった。