第162章 涙色の答案用紙(26)修学旅行編
空に雲が浮かんだ昼下がり。
私達は、祇園の商店街を散策していた。でも、家康と天音ちゃんはまだ、来なくて……政宗は何度か家康に電話をかけたみたいだけど、繋がらなかったみたい。
私達三人は、
そこから離れて観光地を回ることに。
念の為、移動する前につつじさんの店に訪れ、二人と連絡が取れないことを伝えると……。
「きっと、来るよ」
つつじさんの穏やかな声。
何処か自信に満ち溢れたような……そんな素敵な微笑みを私に向けてくれた。
そして実は、もう一枚。
一緒に譲り受けた辛子色の男性の着物があることを、教えてくれて……それを、どうしても家康に着て欲しいって。
早く、仲直りして欲しいからって……。
昨日、あの僅かな時間。
二人で居たのは本当に少しだけ。なのに、つつじさんにはそれだけで……今の私達が、ぎこちない関係なのが伝わってしまったみたい。
(仲直り……。
でも、ケンカをした訳じゃない)
ただ……。
あの花火大会で
想いは同じだって……
勝手に、私が勘違いして。
でも、家康が石碑の前で
キスしてたのは天音ちゃんで。
思い出を全部、
閉じ込めようと必死になって。
なのに、
ーー俺の痕しか、付けなくていい
また、勘違いさせるから。
全然、わからなくなって。
普通にしようと思っても、
ギクシャクして。
普通に話してるつもりでも、
色々、気になったりして。
(終わらせ方がわからない、
鬼ごっこしてるみたい……)
結い上げたくても、結えなかった髪。
私は左側の首筋に指を数回、滑らす。
政宗のはすぐ消えたのに。
家康のは少しも消えない。
それは、シルシだけじゃ……