第161章 涙色の答案用紙(25)修学旅行編
鞄と草履を用意して貰い、
私達は散策に出かける準備を始める。
「良く似合ってる。……髪は結わねえのか?」
「……まだ、残ってるから」
俯いてそれだけ言うと、政宗には伝わったみたいで……「悪い」その一言と、頭に優しい重みが同時に降りて来る。
つつじさんとご主人に、自由行動が終わる一時間前までには戻ると約束をして、その間、制服と鞄を預かって貰う。
「忘れ物するなよ」
「あ!携帯、制服のスカートに入れたままだった!」
藍色の着物姿の政宗に呆れられながら、私はへへっと笑い。たたんで隅っこに置いた制服のスカートのポケットに手を入れる。
(あれ?こっちじゃない。反対かな……あ……)
ひんやりした金属の感触が指に伝わり……取り出す。
三つ葉のヘアピン。
(そうだった。明智先生に車で送って貰った時に……)
私は、一瞬悩み。
ーー自分を見失うな。
織田先生の言葉が、
急に頭の中で過ぎって……
ヘアピンを帯の間に挟んだ。
「お前は迷子になりそうだからな。携帯は、肌身離さずちゃんと持ってろよ」
「そう言えば、ひまり。……自分の携帯で写真撮ったりしてないよね?」
「う、うん。ちょっとね……早く行こう!」
家康と天音ちゃんと合流するまでの間、京の町を歩き、甘味処で休憩したりしながら、三人で時間を過ごす。
トリートメント。
ゆっちゃんが前に気にしてくれてたから、話そうか少し悩んだ。でも、やめる。まずは、天音ちゃんの話を聞かないと。
「お揃い何買う?やっぱ、定番は〜」
ゆっちゃんは、ちょっと私に似てない?と、小さなこけしの携帯ストラップを持ち上げる。
でも、
「和柄のポーチとか、ハンカチも可愛いよね?」
心の中でゆっちゃんに謝り、私も真似して品物を顔の隣に持ち上げ笑う。
この時見上げた空は、まだ青かった……