第161章 涙色の答案用紙(25)修学旅行編
襖を開けると、十畳の部屋の中にズラリと多種類の色、柄の着物が畳の上に並べられていた。
ゆっちゃんは既に着付けが終わり、
「どう?ちょっと大人っぽいの、選んで見たんだけど?」
「似合うよ!すっごい綺麗!」
紺色の生地に草花模様。
秋の七草の一つ萩が所々に大きく描かれ、しとやかで落ち着いた雰囲気を感じる。普段、元気で明るいゆっちゃん。真っ赤な紅葉柄とかを選ぶのかな?って、思ってたけど……
一見その真逆のイメージが魅力を、グッとアップさせている。
「何か、ゆっちゃんの新たな一面を発見!って感じで本当に素敵!」
本当?ありがとう。
頬に手を添え、大人の女性みたいに微笑むゆっちゃん。ボブヘアーの髪を結い上げて後れ毛を少し垂らし、大ぶりの簪をさした姿は、お世辞じゃなくて本当に綺麗。
今、政宗は隣の部屋でご主人さんに着付けをして貰っている。
ゆっちゃんは、政宗に見せてくる!と、言って張り切って部屋から出て行く。
私は、つつじさんの隣まで移動して、ちょこんと座り着物を間近で見て、触れて魅入られる。
「ひまりちゃんの、好きなのを選ぶといいよ」
「私、ピンク色が好きで……折角だから秋を感じるような色味も、良いなって」
一つ一つ手に取りながら、悩んでいるとつつじさんは突然、短い声を上げポンと何かを思い出したように手を叩く。そして、奥にあるタンスの上段から一つ。
たとう紙を取り出すと……
紐を解いて、
私の前に広げて見せてくれた。
淡黄色の生地に、色取り取りの小花が散りばめられた着物。つつじさんに、きっと似合うよと、勧められ……
「可愛い〜!でも、良いんですか?」
明らかにレンタル用じゃなくて、大切に仕舞われていた着物。しかも、他の着物と肌触りも全然違う。
素人で知識のない私でも、高級なモノなのがわかって、さすがに遠慮すると……
つつじさんは、この着物は小袖と言って、江戸時代から伝わるモノだと話してくれた。