第160章 涙色の答案用紙(24)
『タイムカプセル』は二つ。
小学校の新学期。
高校生の新学期。
時間を戻せるなら……。
もし、そんなチカラがあったら……。
私は何を願うのかな。
「天音ちゃん。話って?」
ジャリ……。
ホテルの庭から外に続く石段。
その両側に咲く、赤い花。
彼岸花は薄っすらと月に照らされ……
幻想的な世界を創り出す。
少し、怖い。
そう思うのは、彼岸花は毒を持っていると聞いたことがあるからかな。
天音ちゃんは何かを胸に抱え、彼岸花の赤い花弁に手を添える。そして、静かな声で「花言葉を知ってる?」と、私に聞いた。
首を二、三回横に振ると……
「沢山あるみたい……でも、『悲しい思い出』『思うはあなた一人』その二つが……私達には合う気がする」
「悲しい思い出?思うはあなた一人?」
私達には、って。一体……
急にどうしたんだろう?
口には出さず、心でそう思った時。
天音ちゃんは立ち上がり、
一歩、一歩……
まるで、勇気を振り絞るように。
ゆっくり地面を踏みながら、
私に近づいてくる。
「今夜は悲しい思い出から……もう一つは明日にさせて」
凄く、勇気がいるから。
そう言ってくにゃりと笑い、目頭に涙を浮かばせ胸に抱えていたモノを私に見せるように……差し出した。
暗闇に浮かぶ。
携帯用トリートメント。
見覚えがあるモノ。
「ご……め、んなさい…」
カタカタとそれが揺れる。