第160章 涙色の答案用紙(24)
本能寺跡地の石碑前__
昼間の観光客が嘘のように消え、賑わっていた店が閉店。
夜は夜で一味違った、古都の雰囲気。
その暗闇に集まった影は、重苦しい空気に包まれていた。
「ワームホールが開くのは、明日の夜九時頃。お二人はこの石碑に来て、待機をお願いします」
佐助、三成、秀吉は、明日に備え、本能寺跡の近くに宿を確保。
「予報では、その時間は晴れ。……しかし、最近の傾向から見れば、急に雨が降ることも珍しくありませんね」
「俺と三成は石碑待機。佐助は、その間どうするんだ?」
「近くの川原で合図を送る準備を。信長さんと光秀さんはホテルで待機して貰って、彼女を見張って下さい」
室内にいれば、万が一ワームホールが追って来ても外よりは安全だと、佐助は考えた。無事にワームホールが去るか、消滅した場合は全員に分かるような合図を送ると告げる。
「家康に、日時を教えるつもりはない」
信長はニヤリと笑う。
事情や日時を教えるつもりは鼻からないが、休憩時に……
ーー目を離すなよ。
釘は刺しておいたのだ。
(馬鹿でも頭の回転は良いからな。薄々、勘付いてはいるはずだ)
現に、空模様を頻りに気にしてた家康。
「ホテル、七時集合。その時間ならば、変更はせず予定通り行う」
明日の自由行動、朝から夜の七時。観光地のライトアップや夜の京都を体験できるよう、考慮して長めに時間を取ってあると信長は、話す。
「俺も明日、他の生徒を見回りながら様子を伺うつもりだ」
光秀は、こんな時にまで何故か白衣を着用。それを翻し、不敵な笑みを浮かべ石碑に触れると、
「確か、天正十年。明智光秀に裏切られ織田信長は自害し、本能寺は焼け落ちた。……が、有名な説。そうでしたね?」
背後に立つ信長に問う。