第159章 涙色の答案用紙(23)修学旅行編※家康様side
なだらかな坂を登り、朱色の門の下。
政宗と小春川の姿を遠目に映して……
まるで、何年か振りに会って話をしているようなひまりとの、時間。
二人で歩ける残りの距離。
無言で終わらせたくなくて、
「何で、さっき真ん中にしなかったの?」
口が勝手に、下らないこと聞いてた。
願掛けが不要なぐらい、
政宗と上手くいってる証拠……
俺にはそう思え、
それでも何かを期待した。
深い理由なんてない。
そうひまりの口から聞けたら、ちょっとは気分が晴れる気がして、俺は聞いたのかもしれない。
(探るみたいなこと、聞いてどうすんの)
途中、それに気づいて。
答えたくないなら、答えなくていいから。
ボソッと付け加えると。
「……お願いごとは……欲張ると叶えて貰えないと……いけないから」
帰ってきた返事は曖昧で、真意は掴めない。「それだけ……だよ…」だんだん語尾につれて小さくなる声に、俺はひまりの横顔を横目で追うと、
肩からサラリと髪が滑り落ちて、甘酸っぱい香りが広がる。
「さっき、政宗にも……聞かれた」
ひまりはポツリそう呟くように言って、俺とは目を合わさず、足下にある自分の影に視線を落とした。
「ひまりーっ!」
俺たちに気づいた、小春川と政宗。
こっちに向けて手を上げるのが見えて……
ひまりは、
反応して走り出そうと足を蹴る。
それを、見て……
俺は無意識に腕を伸ばす。
スッと隣から消えるひまり。
空気を掴む手。
あの日の、
一番の「後悔」に気づいた俺。
思わず目を見開き、
何の感触もない手の平を、見つめた。