第159章 涙色の答案用紙(23)修学旅行編※家康様side
あの北海道旅行からまだ、
ひと月も満たない間の再会。
「電話しようかと思ったんだけど……折角だから、お店屋さんを覗きながら探してたら、偶然つつじさんと会って」
「また、二人に会いたいと思っていたからねぇ。こんな、嬉しいことはないよ」
俺たちは、取り留めない話をした後。
「では、明日!必ず、行きますね」
「お世話になります」
集合時間まで残り少なく、
ある約束を交わすとその場で別れた。
「凄い偶然だよね。まさか、嫁ぎ先が京都だったなんて。本当に、びっくり」
ひまりは、よっぽど嬉しかったのかぎこちない俺との空気を少し残しながら、表情は柔らかい。
徐々に戻り始めた笑顔。
(顔色も、だいぶ良くなったし)
目の下の隈も消えている。
それに安堵の息をつきながら、取り戻したのは自分じゃないと思うと、複雑な感情が流れる。
「でも。良かったの?約束して……」
「それはこっちの台詞。……あの二人に聞かなくて良いわけ?」
とんとん拍子に話が決まり、
俺たちの独断で約束を交わした。
つつじさんのご主人は、呉服屋を経営。
観光客向けに着物の貸し出しを始めたのは、最近らしい。この縁を大切にしたいから、ぜひ無料で提供させて欲しいと言われ……その言葉に甘えることに。
「ゆっちゃん。花魁さんしたいって言ってたんだけど、その格好だと外出は出来ないみたいで」
ひまりは、店の名前と場所の地図を書いたメモを口にチョンチョンとあてながら、何処かで着物をレンタルするつもりでいたからと、話す。
「だから、この話を聞いたら喜ぶと思う。でも、本当に良いのかな?無料でお借りしても……」
「良いんじゃない?凄く、喜んでたし」
ひまりは最初。
無料と聞き遠慮していたが……
着物の良さを分かって貰えたら、それだけで十分だと言われ、最後は深々と頭を下げ、お礼を言っていた。