第159章 涙色の答案用紙(23)修学旅行編※家康様side
参道__
なだらかな坂の道の両側に、土産店や飲食店、数々の店が並ぶ。
古都の雰囲気も感じられる、趣ある参道。紅葉の季節には、かなり混み合うらしいが今日は何とか観光客と距離を取りながら、歩ける。
白鳥の体調を考慮し、ある休憩所に入って暫くすると……
「家康。さっさと、ひまり達を呼んで来い」
「……………」
織田先生は、「早く行け」と言うように顎をクイッと動かすと、呑気にコーヒーを口にして片肘をつく。
俺はグラスの中に残ったジュースを飲み干し立ち上がると、ごちそうさま。とだけ言って店内から出る。
(人を無理矢理引っ張ってきた癖に、よく言うよ)
内心イラつきながら、さっき自分で言った「ごちそうさま」の言葉で、更に苛立ちが募った。
あのメールの件。
気になる癖に、聞きたくない。
笑顔が少し戻ったひまり。
ヘアピン付けてないとこ見ると……。
(っとに。何やってんの俺)
情けないことばっか言って。
怖気付いて……
バカみたいにひまりの事しか、考えてない癖に。
正面から。
真っ直ぐひまりを見ようとすると、
あの顔が真っ先に浮かぶ。
ーー私の答案用紙……でしょ?
涙で消えた光。
もう二度とあんな顔、させたくない。
もう二度と傷つけたくない。
もう二度と辛い想いをさせたくない。
もう二度と壊したくない。
俺を押さえ付けている、感情。
あの日の「後悔」
それが一番の間違いだと。
見失った本当の間違いに、この後
……ようやく気づきはじめた。
来た道を戻る途中。
「ひまり」
ある店前で立ち尽くす、
ひまりの後ろ姿。
「家康……」
そして、もう一人。
「おや?あんた達、本当に仲が良いんだねぇ」
着物姿の、老婦。
つつじさんが、にこやかに笑っていた。