第158章 涙色の答案用紙(22)修学旅行編
真ん中にしなかった理由。
それは、恋愛のお願いごとや願掛けは
ひとつだけにするって……
あの赤い橋でするって決めてたから。
まだ、願いごとは決めきれてないけど……
明日までには。
あの場所に行けば。
ちゃんと見つかる気がする。
不思議とそんな、
確信に似た自信だけは……あった。
「そこまで深い理由じゃないんだけど。ちょっと……それに、学力のお願いもしたかったし……」
いけなかっ……た?
ちょっと不安になるのは、政宗の表情と声がいつもより真剣さを帯びている気がしたからかも、しれない。
そう答えると政宗は珍しくため息を吐き、私の掴んだ腕を引き寄せる……
そして
至近距離で
急にパッと離して
ペチンッ。
おデコを指で弾いた。
「いっ……いたいよーっ」
私は両手で前髪を押さえ、一歩下がる。
「お前は、いつになったら男心ってモン。学習するんだ?ったくよ。あれだと、あいつ……」
まぁ、理由があるなら仕方ない。
涙目でおデコをさすっていると、目の前で、政宗は呆れたように、はぁーっ。と、声を出して息を吐き……
「とりあえず、小春川を呼んでくるか。フラフラして迷子になるなよ?」
「大丈夫!携帯もあるし!もし、迷子になっても……ちゃ…んと……」
いつも……。
「何だ?ちゃんと?」
私は何でもないと言って、首を横に振り笑う。
じゃ、後でね!
くるりと政宗と背を向け、
他の修学旅行生にまじりながら
小走りして坂の方に向かった。