第158章 涙色の答案用紙(22)修学旅行編
ぽんぽん。
誰かに頭を叩かれて、ハッと意識を戻す。顔を持ち上げると、心配そうに私の顔を覗き込む政宗が立っていた。
「お前は、みくじやお守り良いのかよ?」
社務所の方をクイッとされ、私は少し反応が遅れ…たじたじに顔を縦に振る。
「う、うん。参拝だけで大丈夫!あれ?ゆっちゃんは?」
「恋の石がどうとか言って、騒いでた。にしても、暑すぎだろ」
(そう言えば、ゆっちゃん一番やりたいって言ってたっけ?)
片方の石から目を閉じて歩いて、もう一つの石に辿り着くと、恋が叶うとか教室で話していた事を思い出す。
「ほんと、暑くなってきたね」
日中で日差しが強まったせいか、長袖のブラウスの下がじんわり汗ばむ。私と違って、半袖シャツ姿の政宗。
それでも、この真夏並みの暑さには勝てないみたいで、白いシャツは肌に吸い付き、赤いネクタイを解けそうなほど緩めている。
あれ?他のみんなは?
私は、ブラウスの袖をクルクルと肘のあたりまで丸めながら聞くと、政宗はさぁーな。と、言って右肩を一瞬だけ上げ……
「多分、どっかの店で休憩してんだろ。白鳥の体調も考えねえとな」
「もしかしたら、参道の方に行ったのかな?ちょっと探してくるから、政宗はゆっちゃんお願い!」
両側に多くのお土産さんが立ち並ぶ、参道。確か、食事処や休憩する場所もあったはず。
私は、見つかったら電話するね!
と、ポケットの中に携帯が入っているかスカートの上から確認して、走り出そうとした時。
待てよ。
の声と、
パシッと乾いた音。
「なぁ…。何でお前、さっき真ん中を選ばなかったんだ?」
「え?真ん中……?」
返事までに一瞬、間があく。
最初、何のことかわからなくて……
首を傾けるのと、同時に気づき
「もしかして、お水のこと?」
聞き返した。