第157章 涙色の答案用紙(21)修学旅行編
赤いバスの後ろ。
信長達は、佐助の報告を静かに聞いていた。
「ワームホールが開くのは、俺の計算が間違いなければ……恐らく、明日。場所は……本能寺跡の可能性が高いです」
「やはり、そうか」
信長は自分の下唇を親指でなぞり眉を寄せると、書物の中に織田信長は焼けた本能寺の中で、突如、舞い降りた戦国姫に助けられた……と、記してあった記憶がある事を話す。
「え?それならば何故、修学旅行先に京都を選んだのですか?」
事前に予測できたのなら、回避できたのでは?と、三成は意図がわからず尋ねると……
「ひまりさんの為、ですよ。俺の研究結果では、ワームホールはある一定の周期で現れていることがわかりました。しかし、場所が特定出来る程の存在はなかった」
それが……新学期。あの石碑の近くで観測出来たと、そしてその存在は強まり、みるみる姿を現したと……佐助は眼鏡を押さえ、真剣な目を向ける。
佐助は言い方は悪いですが……と、前置きした上で、今回のチカラはひまりが呼び起こしたと言っても過言ではないと……
「今は、本能寺跡の可能性が高いと言いましたが……一番、可能性が高いのは、彼女を追うようにワームホールが移動することです」
現に、最近までは戦国学園の石碑で観測出来ました。今回、回避できてもまた現れる可能性はいくらでもある。
そう、本当に彼女の心が影響しているならば……。
「修学旅行中なら、彼女の行動も大方見張れますし、場所が本能寺跡とわかっていれば、近づかせないようにすれば良い。それと今後のことを考え、あえての選択だったのでは?」
「つまりひまり……いや、家康を信じてると」
秀吉がそう言うと、光秀は揶揄うように戦国プリンスは言うことが違うな?と、口角を上げ喉奥で笑う。
信長はバスに預けていた背中を浮かせ、フッと息を吐くと……
「そんなチカラが本当に存在するなら、呼び起こしたのはひまりではない。いつまでも、煮え切らん馬鹿の所為だ」
険しい顔つきで目を細めると、カツカツと革靴を鳴らし、信長は清水寺の方に歩き始めた。