第156章 涙色の答案用紙(20)修学旅行編
戦国学園専用バス。
その後ろを一台の車が張り付くように、走っていた。
車内にいたのは三人。
運転しているのは佐助、助手席に秀吉、後部座席に三成。
二人は今回の事情を信長から聞き、許可を貰った上で学校を休み、同じように京都に来ていたのだ。
「時を越えるチカラ……なかなか興味深い話ですが、ひまり先輩が関係しているとなると、別ですね」
三成は頭脳明晰。
佐助の話を聞く内に、色々と頭を巡らせ……。
「以前から、あの文がなぜ現代語で綴られているのか。私も、不思議に思っていました」
「生まれ変わり、転生……。と、までは俺は考えてはいませんが……巡り合わせ、再会、約束、偶然、必然、運命。どれにしても、現に戦国武将と同じ名を持つ皆さんと、かつての戦国姫と同じ名の彼女は……戦国学園に揃い、文の約束どおり再会した」
それは真実です。
佐助は片手でハンドルを操作し、眼鏡を中指で持ち上げる。
「ひまりだけは、何にも知らずに戦国学園に来たってことか……」
秀吉が顎に手を添え深刻に呟く横で、佐助は前を向いたまま、口を動かす。
「しかし、彼女の側には彼がいた。かつて、戦国姫と愛し合った家康公が」
佐助は、何故自分の家に書物が代々受け継がれていたのかは解明出来ないが……戦国姫と一緒に、時を越えた者が居たと。あの書物には記され、それが自分の先祖が何かでは?と、佐助は考えていると、二人に話す。
「あの学園だけに、受け継がれたもう一つの歴史。恐らくあの書物は……おっと、いけません。バスを見失いました」
観光シーズンから外れた時期とは言え、市バス、観光バスが何台か走り、混み合いがちな道路。
話に集中している間に、ひまり達が乗っている赤いバスを見失った佐助はアクセルを踏み、忍者の如く車と車の間をすり抜けはじめ……
「へ!?わぁああ!」
「た、頼むから安全運転……ま、前!」
「必殺、ドロンッ!」
出来るかーっ!
秀吉の雄叫びが京都の市内に響いた。