第28章 「苺のポッキー(10)政宗様編」混合side
「ほら、開けろ。……食わせてやるから」
政宗の目が片方だけ、妖しく何かを宿すのを見て動けなくなる。
声は凄く優しくて、トクトク鼓動が微かに震え出した。
「じ、自分で食べるから……」
「……指でこじ開けて、欲しいのか?」
「そ、それはやだっ///」
「なら、大人しく言うことを聞け」
政宗の声がいつものからかうような口調じゃなくて、頭の芯がぼっーとしてくるようなくぐもった声……
ギシッ……
私に覆い被る政宗が少し動く度に、ベンチが軋み音を立てる。
(早く食べて、離れて貰わないと!///)
心臓が持たない。
政宗は、時々強引な所がある。
言い出したら止まらない、そんな時があるのを知ってる。
私をからかうのが好きで、意地悪で……
(家康の意地悪と似てるようで、似てない)
「早くしろ。口の中でぐちゃぐちゃに」
指掻き回されたく
なかったらな。
カプッと耳朶を軽く噛まれ、身体中に甘い痺れが一気に走る。
「た、食べます!!食べるからっ///」
弾けたように口を開けて目の前にある、ポッキーを急いで食べた。
すると政宗は一瞬、面食らったように驚いた顔をした後、吹き出し笑いをして私の身体から降りる。
「もうちょっと、色気のある食い方しろ」
「……ゴクッ。……そんな食べ方知らないもんっ」
プイッ。と顔を背けると、顎を掴まれまた正面に戻される。
「教えてやろうか?」
「え、遠慮しておきます!」
これ以上、何かされたら心臓が本当に持たないよ。
時計の針。
知らない間に8時を指していて、慌てて私達は公園を出る。
家に帰る間、密かに考えていた。
家康にも好きな子がいて。
政宗にも好きな子がいた。
ーー君は姫に選ばれた!そして今度は君が運命の相手、戦国武将を選ぶんだ!
佐助君の言葉が浮かぶ。
既に好きな子がいる戦国武将は、やっぱり違うのかな……。
私が選ぶって、つまり……
誰かを、好きになるって事だよね?
誰かを好きになったら、何か解るのかな?
苺のポッキー。
家康との味は甘酸っぱくて。
政宗との味は解らなかった。
「幼馴染」「同級生」
二人とも私は大好きだけど。
その好きと『好き』は違うことを、教えてくれたのかもしれない。