第28章 「苺のポッキー(10)政宗様編」混合side
ひまりが玄関から家の中に入るのを確認した後、俺は少し離れた場所の塀に持たれ、
(一応しとくか)
面倒だ、と思いつつ携帯を取り出しコールを鳴らす。
灯りが点いた、部屋を見上げ。
プルルッ…プルルッ…プッ。
「……遅いんだけど」
開口が一番がそれかと、突っ込みたくなる。視線を固い地面に落とし……
「何時迄とは、言われてねえだろ?」
「普通に考えたら解るし」
「送り狼にならなかっただけ、感謝しろ」
「………はいはい。ひまり送ってくれて、どうも」
電話越しに、珍しく素直に礼を言う家康。ちょっと苛めてやろうかと思ったが……
「……俺も本気出させて貰う」
その想いは譲れねえ。
先手かけやがって。ったく。
お前もそのつもりなんだろ?と、釜かけてやると、数秒の間があった後……
「ひまり、話したの?」
「まぁ…最終的には、誤魔化されたけどな」
家康の返事を聞いて、確信に変わる。
「俺も必死だからね。変な虫に取られたくないから」
「お前が避けられてる間に、掻っ払ってやる」
あのひまりの様子だと、当分家康とは距離を置くだろうからな。
先手取られた分、優先に立つしかねえだろ?
わざわざ口には出さなくてもその言葉の意味ぐらい、頭の回転が早い家康には十分伝わる。
電話を切ると同時に、カラカラと音を立て窓が開く。
「絶対、渡さない」
「まだ、お前の女じゃねえだろ」
俺は顔を上げ、家康の不貞腐れ顔を見て満足気に笑みを溢す。
全力で打つかり合う……
それが俺らの友情の証ってやつだな?
ひまりの部屋の灯りが点る。
次は、あれだけじゃ済まねえからな。
覚悟しとけ。
明日の仕込みの段取りを頭に浮かべようとしたが、家に辿り着くまでの間……
ーー政宗……
あん時のひまりの顔しか、浮かばなかった。