第155章 涙色の答案用紙(19)
夏休みの最後。
宿題の追い込みしてたある日。
追い込みって言っても、家康はとっくに終わってて……私、一人。
まだ、終わってないの?って、呆れながら教えて貰った。でも、答えを見てやらない所は褒めてくれて……
何だかかんだ言いながら、丁寧に教えてくれた。休憩の合間に、二人で携帯で京都の情報色々、調べてる時に……レンタル着物の話になって……。
(ダメだなぁ……。すぐに、思い出しちゃう……)
思わず溢れた溜息。
「また、家康のこと考えてるのか……」
止まっていた手に重ねられた、
ゴツゴツした大きな手。
政宗の青い瞳が、
ゆっくりとこっちに向く。
図星をつかれ動揺しそうになる前に、私は軽く笑って首を振った……
その、数秒後。
ドォーンッ!!
大嫌いな雷。
それが近くで落ちたのか地鳴りがして、凄まじい爆裂音。
「きゃあぁっ!!」
耳を塞いだ瞬間、タオルが床に落ちてフッと明かりが消えた。
一瞬、呼吸も止まったかと思うぐらい、静まり返って……
(あ、れ……)
「大丈夫か?」
私の身体を包み込む、
石鹸の香りと大きな腕。
顔を上げると、
暗闇にぼんやりと心配そうに眉を下げた、政宗と目が合う。
「ご、ごめんね!だ、大丈夫だから……」
「震えてる癖に、強がるなよ」
一度離れた身体。
今度は後頭部と背中に腕が回って、再び引き寄せられる。
逞しくて広い政宗の胸。
ドクドクと脈打つ音。
政宗の鼓動の音か自分の音か……
わからない。
「ま、政宗…っ…あ、あの……そ、の……ドキドキして……だから……」
離して欲しいとお願いをする。
「……っ。ばか。お前だけじゃねぇ…。ドキドキしてんのは。……俺もだ」
部屋に走る光。
(政宗……)
真剣で真っ直ぐな瞳が、私を見下ろす。
「ひまり……」
囁かれた名前。
ぎゅっと瞼を閉じた……