第155章 涙色の答案用紙(19)
本格的に雨が降り出し、
空に雷が数回鳴り響いた。
政宗の部屋の窓ガラスが揺れ、光がピカッと走るのを見て、私は履いているデニムのスカートの下に腕を入れて、膝を抱える。
「何だ?お前、雷苦手なのか?」
「う、うん。ちょっとね。でも、さっき調べたら一時間後には上がるみたいだし、そしたら帰るね」
なるべく雷を意識しないように私は頑張る。政宗が持って来てくれたジュースを受け取り、あまり部屋の中をジロジロ見るのは、よくないかな?って、思いながらバイクの雑誌やレシピ本が並んだ本棚が視界に入ってしまう。
(年頃の男の子って、こんな感じなんだ……)
今まで家康以外、男の子の部屋に入ったことない私。何だか落ち着かなくて、そわそわする。
家康の部屋はどっちかって言うと、高校生って感じがあまりなくて、物は最小限で清潔感があるシンプルな雰囲気。
(小さい頃から行ってたから、すっかり自分の部屋みたいな感覚で……)
オレンジジュースが入ったコップに口をつけると、甘酸っぱい香りと味が広がった。
「何か、政宗らしい部屋だね」
「それ、褒めてんのか?」
もちろん!と、答えると政宗は「あんまり見るなよ」と、笑って肩に掛けていたタオルで頭を乱暴に拭いた。少し距離をあけて私の隣に座ると、首の凝りを取るようにコキコキ鳴らす。
厨房仕事は汗を沢山かくみたいで、政宗はさっきシャワーを浴びてきた。
(凄いな。学業と部活だけでも大変なのに、お店まで……)
ほんのり爽やかな石鹸の香り。
服にポタポタ落ちる雫を見て私はクスリと笑い、タオルに手を伸ばす。
「ちゃんと拭かないと、風邪引いて修学旅行。行けないよ?」
「お前の着物姿。楽しみにしてるからな。風邪なんか引いてられるかよ」
ーーひまりの着物姿。楽しみにしてる。
政宗の言葉。
それに家康の声が重なって……
髪を拭いていた手が止まる。