第154章 涙色の答案用紙(18)※家康様side
昨日、ひまりの鞄を届けに行った時。中で俺が持っている書物の話と、明智先生がなるべく修学旅行で俺たちの班に同行すると聞き……
出てきた、織田先生に迫った。
ーー時を越える力って、確かあの書物に書いてあった話ですよね。説明して下さい。
ーー……貴様は、興味ないと言わなかったか?
ーーそれとこれとは別です。俺はひまりを失いたくない。
あの書物には、かつて戦国姫は時をかけ、戦国時代に舞い降りたと記してあった。お伽話みたいな非現実な話。俺は、物語か何かの延長かと思っていたが……
ーー貴様が持っているあの書物は、謎が多い。俺らが学んだ歴史とは違い、もう一つの歴史が刻まれ……そして、ある男が何故かもう一冊、同じ書物を持っている。
ーーある男?もしかして、春にひまりの前に現れた……
あの手紙をひまりの鞄に仕込んだ日の夜。ひまりは、俺の家に来て騒いでた事を思い出すと、
ーー佐助という男だ。石碑について色々と調べていてな。俺らに届けられた文とは別に、自分の父親が届けられなかった文をある日、俺に見せに来た。
織田先生は多分、その男だ。と言い、その文は風化して一部分しか読み取れなかったと……
『時を越える力が現れても、決して愛する人を、自分を見失わないで』
時を越える力=ワームホール
それについて以前から詳しく調べ、ひまりに近づき様子を伺い……
愛する人……つまりひまりが誰かを好きになり、何かを見失った時にその力が現れるのでは……と、それを防ぐ為……何かを事前に知らせるように、戦国姫は文を残したのでないかと、推測を立てたらしい。
ーー信じるか信じないかは貴様の自由。しかし、現にその力は新学期の日に現れ、今も存在している。
ーー……ひまりの心の影響。
ーーそれもあくまでも憶測だ。
織田先生は去り際に、
「失いたくないなら、見失うな」
そう言い残した。