第154章 涙色の答案用紙(18)※家康様side
特にあてもなく。
待ち合わせ場所によく使われる、時計台がある広場に来た俺たちは、木のベンチに腰掛けた。
普段なら割と人が多い場所。
天候があまり良くないからか、今日はちらほら数人いる程度。
「で?ひまりと、上手くいってねえのかよ」
「……上手くいくも何も。付き合うまで、いってない」
夏休み最後、大会後の報告しろとか言って幸村から掛かってきた電話。つい、浮かれてやっと添い遂げられそうとか、話したのが間違いだった。
(ほんと、あの時はバカみたいに浮かれてたし、俺自身)
まさか、こんな一気に関係崩れるとか。
「お前なぁ。いい加減にしろよな。中学ん時も、周りがイラつくぐらい焦れったかったしよ」
「俺なりに必死。ただ今は……」
「ただ、何だよ?お前がさっさと想い伝えたら、丸く収まるんじゃねえのか?」
ひまりをその気にさせといて、可哀想だとか、横から他の奴に取られるぞとか……今、一番痛い台詞を吐きながら、幸村は両腕を後ろの手摺に投げ出す。
「……………」
時計台の下。
待ち合わせていたのか笑い合い、仲良く腕を絡ませ前を通り過ぎる男女。
(今は、ひまりにあの笑顔が戻ればそれで良い)
俺は頭を抱え、
保健室のやり取りを思い出す。