第154章 涙色の答案用紙(18)※家康様side
空は薄く雲って青空は見えない。
それでも隙間から微かに覗く水色。
駅前は薄暗さはあったものの、
灰色に染まりつくす程ではなかった。
待ち合わせ場所に辿り着けば、もう一人。あの月みたいな髪色は薄暗くても目立つ。
俺は、頭を落としてあえて自分から寄っていかず、幸村が近づいて来るのを待った。視線の先に映るスニーカー。と、もう一つ……盛大な溜息が聞こえるようにして、顔を上げる。
「何で、あんたがいるわけ?」
あからさまに俺は不機嫌な声。
「この世の終わりのような顔して、昼間から辛気臭いヤツだ」
「悪りぃ。今日、お前と会うことバレてよ。一言、物申す!とか、何とかで……」
幸村は悪気はないとか言って、顔の前に片手を上げ、俺がプイッと顔を背ければ、馴れ馴れしく肩を抱いてくる。
で?何の用?
不機嫌さが増す声は隠さないでおく。
「秋季大会で、次こそはひまりを、頂く」
「……もしかして、物申すってそれ?下らない。幸村、行くよ」
俺は上杉を無視して歩き出すと、
「ほぉ……。その様子だと、まだ手に入れていないな?」
その言葉に足を止める。
今、一番触れて欲しくない部分を土足でづかづか上がられ、苛立ち俺はギロリと睨む。
図星か?と、眉一つ動かさない肌白い顔。
「あんたには、関係ない」
「夏の大会とは、目が別人だな。光を失った死人のような目をしている」
「……何が言いたい訳?俺に負けたのが、そんなに悔しいの?」
「あれは、たまたまだ。今のお前になら、余裕で勝てる」
上杉は喧嘩を売りたいのか目をスッと細め、頭上から俺を見下ろすと、珍しく口角を上げた。
(今頃、ひまりは……)
政宗といる。
それだけで、落ち着かない心。
本当は今すぐ……。
俺は片腕にギリッと爪を立て、無言で睨み合う。
火花が間に散らせ、瞬きもせず顔を見合す俺たちの間に、見兼ねたのか幸村が割って入り、
「はぁ……。どっちもヤンデルな、コレは」
真ん中で頭を抱えた。