第153章 涙色の答案用紙(17)
休日の曇り空。
晴天にはならなかったけど、灰色の空に少しだけ裂け目が広がって、そこから薄っすらと光と空が覗いた。
「いらっしゃいませ!何名様でしょうか?」
「大人三名で、お願いします」
私は頭を下げて、
お客様を席まで案内するとメニュー表を渡す。
小さな赤ちゃんを一人連れた、三人の奥様方。
テーブルに水を運んでいくとオススメは何かと聞かれ、私は真っ先に政宗が期間限定で出している、秋の甘味スイーツのメニューを指差した。
「今日一番の人気メニューになります」
贅沢にも秋を感じるサツマイモと栗の両方が入った、白玉和パフェ。生クリームと餡子もたっぷり入っていて、下には抹茶プリンで、スイーツ好きには堪らない。
ちゃっかり自分も開店前に試食させて貰い、本当に美味しくて、頬っぺたが落ちそうだった。笑顔で自信を持ってオススメすると、お客さんも写真を見合いっこした後、「本当に美味しそうね」と言って頷き、メニューを閉じた。
「なら、それを三つお願いします」
「はい!ありがとうございます!期間限定スイーツ、三つお願いします!」
カウンター越しに厨房にいる政宗に声をかけると、「了解」と声が返ってくる。
接客意識も力を貸してくれて、久々にちゃんと笑えた気がして……
(この調子なら、大丈夫だよね)
折角の修学旅行。
これ以上、ゆっちゃんや政宗に気を使わせたくない。あと、何故かずっとぎこちない感じになってる天音ちゃんにも、良い思い出を作って欲しい。
(問題は………)
「すいませーん!」
「はーい!」
私は賑わう店内を、駆け回っていた。