第153章 涙色の答案用紙(17)
あと、保健室に運んでくれた人にもお礼はちゃんと言いたいのに……。
明智先生は、気にするなとか言って何故か教えてくれない。
(明日、政宗に聞こうかな?)
修学旅行前だから無理しなくて良いって、さっきメールが来たけど、少しでもお礼がしたい。
それに、一人でもやもやしながら時間を過ごす方が具合が悪化する気がする。
三つ葉のモチーフ。
それを指でなぞる。
本当は凄く嬉しい。
壊れてなくて。
家康と過ごした夏休み。
新学期の日。
楽しい思い出と辛い思い出。
(どっちも同じだけあったら……)
コレには、
『思い出』だけが残るのかな。
私は、ヘアピンをスカートのポケットにしまうと先生にお礼を言って、車から降りる。
「修学旅行、なるべく同行する」
一瞬、先生の申し出に疑問を抱く。
でも、すぐに天音ちゃんが一緒の班だからって理由が分かって、私は頷いた。
走り去る車。
家に着く頃には、雨が止んでいて……
雲の隙間から薄っすらと月が浮かんでいるのが、見えた。
部屋に入り、部活の時に三成くんに聞こうと鞄にしまっていた手紙を取り出す。
(結局、何だったのかな……)
休日明けには、修学旅行。
もう、聞けそうにないかな?とは、思いつつ鞄の中に無意識にまた、しまっていた。