第152章 涙色の答案用紙(16)※家康様side
教室に行き、ひまりの鞄だけを持って再び保健室に戻ると……
中から話し声が聞こえ、足を止める。
「……あの馬鹿にはーーーー……」
「来週の修学旅行ですが、なるべくーー……」
一瞬、頭の回転が鈍る。
(そ、んな訳……)
危うく落としかける鞄。
「貴様……聞いてたのか」
「……説明して下さい」
俺は隠れもせず、保健室から出て来た織田先生の前を塞ぐ。
俺はひまりを、失いたくない。
はぐらかされる前に、ただそう一言告げた。
シャッ……。
カーテンを開け、
「…んっ………」
(ひまり)
悲しい夢でも見てるのか。
また俺が泣かせたのか。
枕に染み込む涙の跡。
必ず守るから。
俺は、誓いを立てるように……
唇を合わせ……
昨日、払われた手を伸ばす。
「……お姫様」
戦国姫じゃない。
ひまりは、
小さい頃から俺のお姫様だった。
「泣かせてごめん」
春も石碑の前で泣かせた。
新学期の秋も泣かせた。
『うん!約束!!』
ファーストキスした時。
『約束ね!!』
夏休み前に、宿題出した時。
あの時の笑顔が戻れば。
(もう、それで十分)
ポケットから
三つ葉のヘアピンを取り出す。
結局、指にはめた白詰草と三つ葉は渡せそうに無いけど。
顔の横に添えてある手の中に、ヘアピンを包み込むように入れて……俺が付けた方の赤いシルシを髪の毛で隠すと……明智先生にある事だけ告げ、部活に行く。
そこで政宗にひまりに返しそびれた、折り畳み傘を渡した。