第152章 涙色の答案用紙(16)※家康様side
午後の授業。
小雨の中、
野外走を終えて体育館に戻ると……
「いっちゃん!ひまりちゃんが…っ…」
転がるボール。
体育館の床に横たわる
ひまりを見た瞬間……
心臓を潰され引き裂かれ……
やるせない思いが重くのしかかる。
それでも群がる生徒をかき分け、
「誰か!男子呼んできて!」
「俺が、連れて行きます」
ひまりの身体に触れる。
綺麗に切り揃った前髪が額がへばり付き、そこから大量に流れた汗。
透き通るような肌は色を失ったように、血の気がない。
(俺のせいだ……)
壊れ物を扱う用に、そっと抱き上げる。
「ここまで追い詰めて、どうする気だ」
出入り口。
通り過ぎに政宗にそう言われ……胸が打ちひしがれる。俺は、何も言い返せなかった。
保健室に辿り着くまで、何処を通って、何を考えて、足を動かしたのか記憶にない。
意識を失ったひまりの顔を見るのが、無性に怖かった。
光を失って雨の中をあてもなく歩いてるような、感覚の中……保健室に入ると、明智先生はすぐに状況を把握して、
「ひとまず、ベットに寝かせてやれ」
仕切り用の白いカーテンを、開けた。
頭を支え、衝撃がないようにベットの上に寝かせる。
(熱はないみたい)
額にあてた手を離す。
微かに赤く腫れた上瞼をなぞり、
薄っすら紫色に帯びた下瞼を見る。
「目覚めたら俺か織田先生が車で送り届ける。お前は授業に戻ると良い」
「後で、荷物だけ届けに来ます」
「ん……」
切なげに吐息を溢し身動ぐひまり。
俺は起こさないように静かに離れ、
カーテンを閉めた。