第152章 涙色の答案用紙(16)※家康様side
片膝を立て、ストローを口に咥える。
「何があったんだ?どうせ、一人で抱えて誰にも言ってないんだろ?俺が、聞いてやるよ」
「……別に。それより、何ですか?織田先生も珍しくこの前、世話焼いてきましたけど」
ひまりに想いを寄せてるのは、俺や政宗だけじゃない。にも関わらず、こうやって世話を焼いてくる意図が俺には理解出来なかった。
俺は、ご馳走様でした。と言って飲みきったジュースを足元に置く。
「こっちにも色々と事情があってな。……お前、以前に運命とか関係ない言ってたよな?」
「……言いましたけど」
この学園に全員揃った春。
俺は、確かにそう言った。
「信じてないからか?それともただ単に、頼りたくないだけか?」
「……曖昧なものに興味ないだけです」
ただ、ひまりを
バカみたいに好きなだけ。
言い伝えなんかなくても、知らなくても俺はひまりを好きになった。
それが、運命だと言われたら否定は出来ない。けど、最初から決められていたからとか、そんな理由にはしたく無い。
「なら、何で手紙を仕込んだんだ?」
お前が一番、乗り気じゃなかっただろ?と、聞かれ俺は口を閉ざす。
ちょうど裏庭が見える窓。
降り注ぐ雨で薄暗いが、微かに石碑が見えた。
あの春。
あそこから新しくはじめるつもりで……。
(幼馴染ごっこ。終わらせたかった)
「……そこは、黙りか」
秀吉先輩は俺の側まで来ると、まぁ良い。と、言って子供扱いするみたいに頭を撫でてくる。
ムスッとして俺がそっぽを向くと、
「俺から見れば今のお前は十分、曖昧だ。……何があったか知らないが、ひまりを不安にさせるな」
わかったな?
相変わらずの世話好きを発揮して、秀吉先輩は歩き始める。結局、何が言いたかったのか理解出来ないまま、俺は紙パックをゴミ箱にほり、教室に戻った。