第152章 涙色の答案用紙(16)※家康様side
白い頸にチラッと見えた、赤いシルシ。
俺は完全に血が上り、自分を見失ってひまりソファに押し倒していた。
密室の部屋の中。
二人っきり。
そんなつもりなかったとか、言い訳。
どうしても、欲しかった。
心も身体も。
両方欲しい癖に……
「な、んで……っ……」
気づいたら、泣かしてた。
頭が冷静になった時には、手遅れ。
走り去る後ろ姿。
立ち上がっても、今度は追えず……
ドンッ!
ひまりに払いのけられた方の手で、壁を殴り後悔。何度、俺はすれば気が済むんだと、変な脱力感だけが襲ってくる。
(また、傷つけて……)
拳に指を食い込ませ、それから、ソファに腰を落とすと頭を抱え……
雨音に耳を澄ます。
(……完全に見失って)
前髪をくしゃりと鷲掴みするのと同時に、口の中に鉄の味が広がり、
政宗に今度こそ奪われる。
その焦りと嫉妬で、自分もひまりの心も見えなくなった。
ーー悪いが。待たせて貰うからな。
こうなるのを予測してたみたいに、政宗は帰り際に更衣室で俺に耳打ちした。
恐らく、今頃ひまりは……。
政宗の腕の中で泣きじゃくってる。
それを想像するだけで気が狂いそうになる頭を振り、ある程度、時間が経ってから戸締りを終え、帰路に着く。
玄関に入り、
「いっちゃん。……おかえりなさい。これ……届いてた」
白鳥から小さな茶封筒を受け取る。
中身は、三つ葉のヘアピン。
やっと店から昨夜、連絡が来た。早く手に入れる為に直接送って貰えないかと頼めば、心良く引き受けてくれ……
(コレに頼らないと、想いもまともに告げれないとか。ほんと、ガキ)
渡して、笑顔を取り戻したくて……
今度こそちゃんと伝えるつもりだった。