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イケメン戦国〜天邪鬼と学園生活〜

第151章 涙色の答案用紙(15)




春の暖かい日。


『う〜ん、と。イチゴを一つください』


お気に入りの靴と帽子を被って、ハートのポシェットからお金を渡す。

お母さんに頼まれた初めてのお使い。

るんるんで近くの商店街で歩く。

帰り道、袋の中のイチゴを何度も何度も確かめて、コンクリートに映る自分の影と鬼ごっこ。

車通りの多い道は通るのは禁止。
お母さんと約束を守って、川沿いのあぜ道に出て……


そこで……



黒い髪が春風に揺れた。



『名は………』



私の頭に手を置いて屈み込むお兄ちゃん。普段は知らない人に教えちゃダメだって、言われてるのに……



『姫宮ひまりだよ!』



フッ、って制服姿のお兄ちゃんは笑って……。



『大事にしろ』



一冊の本を私に預けてポンと頭を一つ叩くと、姿を消した。


『いっちゃん。絵本もらったの。よんで』

『……これは、まだよめない。ダレにもらったの?』

『ん〜黒いかみのお兄ちゃん!』


それから……



それから……




『言い伝えごっこ』




唇に柔らかい感触。



『うん!!約束!!』



白詰草と、三つ葉。





「……お姫様」



(お姫……さま…?)





「泣かせてごめん」





(わた…し……泣いてるの?)





ゆっくり瞳を開ける。

滑り落ちる温かいモノ。

微かに残る唇の感触。


そして……



壊れたはずの


三つ葉のヘアピンが……


何故か手の中に、戻っていた。



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