第151章 涙色の答案用紙(15)
外が雨で良かった。
泣き顔を誤魔化せるから。
そう思ったのに……
月明かりもない中。
青い傘が外灯の下に浮かぶ。
「やっぱ、泣かされたか」
政宗はその下で待ってくれていた。
先に帰ってて、大丈夫だからって部活中に言ったにも関わらず。
「まぁ。俺が吹っかけたからな。悪い」
「ひっ……く……っ」
俺にも責任があるって、政宗は何故かそう言って何にも返事しない私を胸元に引き寄せると、頭を撫でてくれる。
(もう……限界だよ…)
泣き止むまでずっと、そうしてくれて……
その間、家康は中から出てこなかった。
何かを伝えるのは難しい。
その日のタイミング。
その日の心の状態。
それは受け取る方も同じ。
その時の状況。
その時の心の持ち方。
想いが同じでも、
逃げたり、追いかけたりしている内に見失ってしまう。
過去の後悔、明日への不安。
辛くて、悲しくて、耐えれなくて。
「今」は……。
大切なことに気づく前なんだって……
これは、必要なことだったんだって……
まだ、わからなかった。
消えたように見えた想い。
それは、曖昧で見えにくいだけで……
心の奥のどこかで溶けていて……
繋がる日を、待っていたのかもしれない。